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きのこだけ、ではなく、他にも楽しめる領域を広げたいと思って、偶然見つけた「たかおか×飛騨 CRAFT SAKE 2DAYS」に一人で参加してきた。
前職(中部圏社会経済研究所)の頃に見かけたfabcafeという文字が、長らくどこかに沈殿していたのであろう。富山高岡・錫・鋳造、飛騨古川・広葉樹・木工、そしてfabcafeという組合わせを見つけて直ぐにカレンダーを確認し、本来は高岡と飛騨それぞれで泊まる企画だったのだが、土日の高岡1泊だけでも良いのかメールした。
FabCafeとは、居心地のよいCafe空間で、レーザーカッターや3Dプリンターなどを使ってアイデアを形にできるFabrication(ものづくり)の拠点。2012年3月に渋谷でスタートし、日本(東京、京都、飛騨)のほか世界各都市7店舗で展開されている。そのひとつである「FabCafe Hida」は、2015年に飛騨市と「ロフトワーク」「トビムシ」の共同出資で設立された「飛騨の森でクマは踊る」(通称ヒダクマ)が運営に当たっており、宿泊施設も併設している。
もう一方の高岡「はんぶんこ」は、やはりデジタル機器を備え、伝統産業である鋳造技術を手軽に体験できる図工室、ギャラリー・ショップ、図書室(文庫)からなる複合施設。高岡での宿泊は古民家を改装したゲストハウス「ほんまちの家」。
ワークショップ単体ならどこにでもあるが、2つの魅力的な町をつないで、鋳造と木工という異素材を組み合わせたところが素晴らしい。富山と岐阜という県境を易々と越えられた理由も主催者に聞いてみた。
自分としては、飛騨は神通川の上流域で富山はその下流域にあたり、昔から文化的にも経済的にも交流があり、それが東海北陸自動車道で結ばれたから、などとそれらしい理屈で納得しようとしていたのだが、実際には、オープンな空間でのものづくりという点で自然に一致したということに尽きるとのことで、そもそも県境などはじめから意識していなかったようだ。行政も民間も、我が町の伝統工芸という枠で囲い込みをしてしまいがちになるのだが、来訪者・利用者にとっては大きな意味を持たないということだろう。
それにしても残念だったのは、自分でつくった錫のぐい呑みときのこデザインの箸置き、栃の木を削って仕上げた箸と鉄奬で染めたトレーを使って、みんなで一緒に飛騨古川で夕食をとれなかったこと。食後にゲストハウスで泊まるところまで含めてひとつの企画だったのだから。何かをつくるために旅行し、暮らすようにひとつのものをつくりあげる、という時間の過ごし方は、もっと広がっていっても良いと思う。